バラモスゾンビは三度死ぬ

大魔王ゾーマの魔力で再び蘇った

耳くそ越しの世界

敬愛する筒井康隆大先生の『玄笑地帯』を読んだ。小説は下調べをせず読む派なのでやはり今回も下調べをせず本を開くとこれは最早小説ではなくエッセイ集であった。このエッセイ集というのが痛快極まりないもので、改行なし字数制限有りテーマ無しというルールなのだが内容がとにかくしっちゃかめっちゃか。話題があちこちに飛ぶかと思えば文章の途中で風邪を引いて寝込んだとかで句点の前後であからさまに文章の温度感が変わっていたり。改めて筒井先生の奇天烈な発想力と劇毒のようなブラックジョークに唸らされる一冊であった。筒井先生の本を読むと何故かいつも創作欲を掻き立てられるというか、創作欲などという高尚な次元には達せずともとにかく自分も何か書きたいという気持ちになる。それで今『玄笑地帯』を真似しながらこれを書いている。と、言いながら先ほどの文から丸一日が経過した。間に仕事と飲み会が挟まり、はて何を書こうとしていたのかと思い出そうとしながらアイスコーヒーを飲んでいると見事思い出したのでそのことを書く。最近身体に気を遣っている。というのも、ここ一ヶ月間、寝覚めの調子が悪いからである。おれは睡眠時間は多めに取る方で、平日は七時間くらい、休日は八時間くらい寝る。酒を飲まずに寝た日はいつも快眠で、寝起きに胆力気力膂力その他諸々の力の充実感を感じていたのだが、最近どうもその充実感が無い。(酒を飲んだ翌日は相変わらずてんで駄目だというのは言うまでもない。)睡眠時間自体は変わっていないのにどうも寝起きが怠い。量ではなく質の問題である。あの充実感よ再び、と、生活を少しだけ見直すことにした。まず考えたのは食生活の改善である。寝起きに胃がもたれているような気がするので、なるべく胃をいたわった食生活を心がけるようにする。「水分・冷たいものを摂りすぎない」、「脂っこいものを避ける」このふたつの点を意識することにした。ひとつ目は問題ないとして、意外に困るのがふたつ目である。営業という仕事柄、どうしても昼食は外食に頼ってしまうのだが、いざ意識して昼食を選んでみると、ビジネス街のランチメニューというのは驚くほど油っこそうなメニューが多い。唐揚げ・豚カツ・チキン南蛮・ラーメン・チャーハン…。これまでなら喜んで飛びついていたメニューだが、いざそれらを避けようとすると急に選択肢が減る。セルフうどんの店ばかりに通うようになってしまった。セルフうどんの店に行っても、油ものは駄目なので天ぷらは避けなければならない。しかしうどんだけでは物足りないので、最近は肉うどんばかり食べている。誠に勝手ながら、肉うどんというのはうどん屋においてマイナーメニューだと決めつけていたのだが、肉うどんには肉のダシの旨さという他のうどんにはない強みがあり、また、二日酔い回復にてきめんだという話もあり、誠に勝手ながら、最近は肉うどんの株が急上昇している。油ものを避けるランチ探しはそれはそれで楽しいのでこれからも続けていきたい。話は変わるが、寝起きの調子の悪さとして、ここ二週間ほど、起きてから小一時間ほど右耳が詰まった感じがして聴こえづらいという症状があった。症状が出始めたときにインターネットで調べてみると「ストレスからくる突発性難聴」「放置すると危険!」だの何だかんだと疑わしい情報が錯綜しており、高度情報化社会に辟易してしまったのでほったらかしにしていたのだが、結局二週間ほど症状が変わらなかったので今日思い切って耳鼻科に行ってきた。医者に症状を伝えると「鼻にアレルギーがある人は鼻と耳が繋がってる管の圧力がおかしくなって閉塞感が出ることが……お酒をよく飲む人にはそういう症状が……」などと色々教えてくれたのだが、いざ耳の中を診てもらうと、何のことない、デカい耳くそが詰まっているだけだった。耳にあれやこれやと突っ込まれているうち、ものの2分ほどで耳栓くらいのサイズの耳くそが引っ張り出された。寝起きに詰まった感じがするのは、寝汗を吸った耳くそが膨張するからだそうである。何とも気色の悪い話である。実は、五年ほど前に外耳炎に罹って以来、再発が怖くて耳掃除をしていない。五年分の耳くそが今日のこの日、引っ張り出されたのである。めでたいことだ。大手術ののち、念のため左耳も診てもらったが、不思議なことに左耳にはほとんど耳くそは溜まっていなかった。それはそれで気になるが、まあスッキリしたのでよしとしておこう。改めて医者に「耳掃除はするほうがいいのか、しないほうがいいのか」と尋ねたところ、「基本的にしなくてもいいです。するにしても2週間に一回程度、綿棒で耳の入り口をぐるっと拭き取るくらいのイメージでいいです。」とのことだった。掃除の仕方を誤ると、今回のように耳の奥の方に耳くそが押し込められて詰まってしまうおそれがあるそうだ。これからも耳掃除はしないでおこう。五年分の耳くそから解放された途端、目に見えて耳の聴こえが良くなった。や、耳の話で「目に見えて」とは何事だ。とにかく、耳鼻科を出て、周りの音がクリアに聴こえるようになったのには驚いた。こうも変わるものか。おれが今まで感じていた世界は一体何だったのか。おれは耳くそ越しの世界から解放されたのである。クリーンな耳万歳。ありがとう耳鼻科の柴田先生。明日の寝起きには耳の詰まりも無くなっていよう。快眠を取り戻す冒険のひとつ目は達成できた。この調子でどんどん生活を良くしていこう。